本書と初めて出会ったのは高校の図書室でした。
友だちが「これおすすめだよー」と持ってきてくれたものの、すぐに読むのをやめてしまいました。
当時の僕はサッカーで忙しかった(^◇^;)
その数年後、本書を手に入れた僕はこれを読んで大号泣でした。
当時ではわからないものがたくさん詰まっていたのだと思います。
本書は八年後に小惑星が衝突し、地球は滅亡するという世界のお話です。
地球は滅亡する、そう予告されてから五年が過ぎた頃の話なので、物語の中の彼らはあと3年の寿命しかありません。
寿命が分かってからというもの、世界はパニックに陥りましたが、いまや平穏な小康状態になりました。
仙台北部の団地に住む住民たちも同様です。彼らは余命三年という時間の中で人生を見つめ直します。
六章からなる本書はこの団地に住むそれぞれの余生の過ごし方を描いています。
ここからはAmazonからのあらすじです。
《自分の言動が原因で息子が自殺したと思い込む父親(「終末のフール」)
長らく子宝に恵まれなかった夫婦に子供ができ、3年の命と知りながら産むべきか悩む夫(「太陽のシール」)
妹を死に追いやった男を殺しに行く兄弟(「籠城のビール」)
世紀末となっても黙々と練習を続けるボクサー(「鋼鉄のウール」)
落ちてくる小惑星を望遠鏡で間近に見られると興奮する天体オタク(「天体のヨール」)
来るべき大洪水に備えて櫓を作る老大工(「深海のポール」)
はたして終末を前にした人間にとっての幸福とは?今日を生きることの意味を知る物語。》
どれも面白いうえに泣ける話ばかりです。でも今回はそのうちのふたつについて書いていきます。
「籠城のビール」は兄弟が妹の敵討ちに団地に入る話。
妹の暁子はマスコミの被害者だった。
暁子は空き巣事件に遭遇して、人質になってしまった。無事に救出されたもののマスコミは面白がって暁子に取材する。
暁子がテレビ映えのする外見だったことも関係があるのだろう。あることないことを騒ぎ立てとにかく面白おかしくテレビや雑誌に取り上げる。
それで気を病んだ暁子は自殺、母も倒れてしまった。
兄弟はこのときのマスコミの筆頭に復讐しにいく。
果たして、三年後に死ぬ相手を許せるのか?
復讐相手との軽やかな会話が緊迫した状況を感じさせない物語で最後まで楽しめた。
「深海のポール」はこれと真逆の話だ。
父は津波に備えて櫓を作るが、僕の生活は大きくは変わらない。
今は、サッカーに勤しむことにしよう。というストーリー。
父が櫓を立てる理由は感動的だが、僕がのんびりしているのも、実に終末らしい。
終末で取るべき行動など、それぞれで違います。
そもそも、終末に取るべき行動など、マニュアル化されていないですしね(^_-)-☆
僕だったらどのような行動をとるか、多分本を読んでいるかもしれないが、簡単に生きることを諦めたくないなぁと普通の感想を言ってそろそろ終わります。
本書の登場人物たちにとっての数年後はありませんが、僕はこの本に奇跡的に出会うことができました。
本書を読んで、日々を一生懸命に生きようと思うとともに、一冊一冊との出会いを大切に読んでいこうと思える、名著でした。